- Building The Glass Tower -
グラス・タワー(The Glass Tower)について
グラス・タワーは1973年にサンフランシスコに完成した、当時世界一の高さを誇った138階建てのビルです。
ダンカン・エンタープライズ社の設計部長D.ロバーツによる設計で、オーナーでもある同社によって建設されました。
それまで世界一位だったシカゴのシアーズ・タワー(現:ウィリス・タワー)と第二位のワールドトレードセンターは屋根部分の高さがそれぞれ442mと417m、アンテナを含むと527mと526mでした。
グラス・タワーには屋上にヘリポートがあるため高いアンテナ部分がなく、最高部は510mにとどまりますが、屋上までの高さ504mは他に群を抜いていました。
またその高さだけでなく、特徴的な黄金色の外装や、見る角度によって異なる表情を示す美しいフォルムも多くの人々を魅了しました。
しかし現在このビルは存在しません。
完成直後に電気設備が原因で80階から上がほぼ全焼しました。
この火災では約200名の命が失われています。
その後ビル全体を犠牲者慰霊モニュメントとして残す案や、火災で損傷した上部を解体して80階にする案もありましたが、
出火責任を問う裁判の後、グラス・タワーはダンカン・エンタープライズ社によって完全に解体されました。
裁判では責任は施工主のJ.ダンカン社長と、社長の娘婿で電気設備を担当した下請け会社の社長でもあるR.シモンズにあるとされました。
グラス・タワーの建設にはサンフランシスコ市長やカリフォルニア州上院議員ら地元政治家の強力な後押しがあり、
J.ダンカン社長から多額の金が流れているいう噂もありました。
異例ともいえる短い裁判は、彼らの関与を隠蔽するためとも言われました。
その存在期間の短さから、グラス・タワーの写真や映像はあまり残っていません。
現在一般に目に触れるものの多くは、裁判の直後に作られた映画『タワーリング・インフェルノ』の再現映像です。
この映画は元々、設計者のD.ロバーツと施工主のJ.ダンカン社長を主人公にした小説と、
消火活動に当たったサンフランシスコ市の消防所員や火災の生存者らを主人公にした小説を、
20世紀フォックスとワーナーブラザースが別々に映画化しようとしていたのを、
前年に映画『ポセイドン・アドベンチャー』を大ヒットさせたプロデューサーのアーウィン・アレンにより初の米メジャー2社の合作で一本の映画として製作され、
世界中で大ヒットしました。
映画ではR.シモンズに責任の大半を負わせていますが、これはダンカン役のウィリアム・ホールデンの横槍と言われています。
また、実際には生き残った上院議員と市長を映画では死なせているのは、当時の世論を反映したもののようです。
上院議員役のロバート・ボーンが悪役っぽく見えるのも、観客への目配せのように思えます。
(以上の記事は映画『タワーリング・インフェルノ』に基づく妄想です。グラス・タワーは現実には存在しない架空のビルです。)
(2011/10/17)